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東方のルパン 義賊の証明1 [作品紹介]

 34号住宅に住む梅望止との因縁は高価な真珠をめぐる話である。
 高価な真珠が年代モノの美しい枕のなかの小箱から発見されたというニュースは、当時の新聞で大きく報道された。それは10年前のこと。発見したのは食うや食わずの労働者だったからなおさら大騒ぎになった。
 このころ梅は「梅放之」と名乗り、彼の手にかかると偽者が本物に、本物が偽者に一瞬にして変えられてしまう、という評判が立つほどの骨董屋であった。その彼が枕の中から発見された、値段をつけようもないほどの真珠12粒の内、6粒を手に入れたのだった。このことを知った魯平は、さっそくこの真珠をいただこうと計画していたところへ、とんでもないニュースが飛び込んできた。なんと梅の首が電柱にぶら下げられていたというのだった。顔をはんべつできないが日ごろ首に掛けていた高価な飾りが梅のものであったため、彼は死亡したことになった。
 なんと、10年たってそれも隣にそのときの梅氏がいたとは。
 魯平は43号住宅と34号住宅の主人を相手に、大商いを決行することにしたのだった。
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東方のルパン 謎を解いて [作品紹介]

 魯平の借りた33号住宅の隣の34号住宅には、「三三」という娘がいた。向かいの43号住宅には二人の青年がいた。そこで魯平は、あの謎の数字の意味するものをついに解いたのだった。

 さて、次に魯平がしたことは、向かいの43号住宅の住人と、34号住宅の住人の徹底調査であった。

 43号住宅の住人は、今をときめく米穀業者で、50過ぎの肥満体の男、柳也恵といった。2年前まで小商人だったこの男、動乱のこのご時世に、良心を何度もどこかへ引越しさせ、大もうけをしたのだった。大もうけをしたからには、豪華な生活をすることをはばかることはない。確かに43号住宅は小さな宮殿のようになっていた。住宅は豪華でも、そこに住む家族はシンプルであった。一人息子ーこの息子を夫婦は溺愛していたーと小さくて痩せこけた妻だった。
 使用人は運転手と数人のした働きの男女であった。

 次にお隣の34号住宅の住人はというと、この住宅は正式の公館ではなかった。梅望止という名の主人は古物業で財をなした男で、中級のお金持ちだが、彼の擁する夫人は6人もいた。この34号住宅に住まっているのは彼の第2夫人と一人娘の「三三」である。この第二夫人は軍艦のような女で、しかもとっくに退役をむかえた軍艦のような女だったが、一番の寵愛を受け続けていた。どうやら彼にとって第二夫人は幸運の女神らしく、この夫人と知り合ってから彼の人生は幸運に恵まれたということだった。娘の「三三」は彼の子供たちのうち、三番目の子供なので「三三(SANSAN)」と呼ばれていたが、学校に上がる頃になって、「姍姍(SANSAN)」としたのだ。15歳にしか見えなかったこの娘は実は17歳であることもわかった。娘には小翠という腹心の小間使いがついていた。34号住宅の主人はこの住宅に1月のうち数日を過ごすのみで、あとは他の夫人の公館を順番に泊まり歩くというわけだ。

 魯平はこの34号住宅の主人梅望止に思い当たることがあったのだった。
 


 
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東方のルパン 次なる謎は? [作品紹介]

 謎があると好奇心を掻き立てられすぐに首をつっこみ失敗した若い頃と違い、魯平も忍耐して事態の推移を見守ることができるようになっていた。
 熱帯魚を入れた水槽、白雪姫の日めくりカレンダー。なんと次の日には、トラックが43号室の前に横付けされ、番の美しい鸚鵡と、鸚鵡の止まり木が運び込まれ、3階のベランダに設えられた。そして、ベランダのテーブルの上には花瓶が置かれ、色とりどりのツツジがいけられている。
 次から次へと展開される謎に、さすがの魯平もお手上げ状態。
 いったいなんと解釈したらいいのか?

 魯平は43号住宅の3階のベランダの観察に集中した。ある日、スーツを着た若者二人が、ひそひそと何かを相談していた。
 そのうちまたまた不思議なものが登場した。
 こんどもトランプ。赤いハートのトランプと赤い字のカードが次のように並べられ、ベランダ近くの壁に貼られたのだった。

 5A33 
 57A33
 K433

 何をあらわしているのだろうか。

 魯平はこの謎のカードを眺めて脳みそをしぼって考えた。
 「5A」は時間、AM5時のことだろうか。33とはまさにこの33号住宅のことか。
 「57A」は、AM5時から7時か?
 「K4」とはなんだろうか?
 いくら脳みそをしぼっても、納得のいく回答はなかった。

 この日の午後またあの怪しい二人連れが33号住宅をさぐっている。2回のベランダにいた魯平は二人の男の会話を聞くことができた。
 「兄貴、本当にあいつはこの33号住宅にいたのかい?」
 「ああ、絶対間違いない。あいつはこの住宅の2階のベランダにいた。俺はこの目でしっかり見た。それがどうして消えてしまったのか不思議だ。」

 二人の男はがっかりした様子で住宅地の外に出て行った。

 魯平は謎で混乱した頭を冷やそうと、住宅地の道を散歩していると、34号住宅の裏口から外出しようとする二人の少女を見た。一人は学生服を着た15歳くらいの少女、もう一人はこま使いと見える。すると家の中から、「三三、ちょっと戻って、お父さんが用事があるって。」と少女を呼び戻している。
 
 なんと、34号住宅には「三三」という娘がいたのだった。魯平はこの名前を聞いて、すべての謎をといてしまった。
 さて、読者のみなさまには魯平の謎解きを推理していただくとして、この晩から魯平の大調査が開始された。




 


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東方のルパン だまされた! [作品紹介]

 数は日ごとに変化する、金魚の色まで変える、こんな通信を交わしている人間を見たくて、魯平は向かいのアパートの部屋を観察し続けると、金魚の鉢を入れたり出したりしているのは、若く美しい女性だった。そして、その金魚鉢を熱心に見上げていたのは、これまたかっこいい若者だった。
 なるほど、二人はこうやって二人だけの通信を交わしていたのか、魯平は納得した。しかし、そこに秘密の匂いがする。魯平は秘密の匂いが大好き。秘密の匂いは金の匂いがするのだから。
 魯平はある日この部屋に忍び込んだところ、待ち構えていた二人に縛り上げられてしまったのだった。なのことはない、この二人も同業者だった。魯平がすんでいるアパートを見つけ出し、魯平をだましたのだった。百戦錬磨の魯平のこと、何事もなくこの場から逃亡したが、今でも思い出すたびに微苦笑してしまう失敗談だ。

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東方のルパン 謎解明の糸口をつかむ [作品紹介]

 魯平が、トランプと怪しい二人連れを発見してから、3日が空しくたった。魯平の33号住宅の真向かいは43号住宅、隣が32号住宅であった。この日3階のベランダから周辺の様子を観察していた魯平は、43号住宅の2階のベランダのすぐそばの壁に、白雪姫のカレンダーがかかっているのを発見した。日めくりカレンダーなのだが、どうしてわざわざべランダのそば、外から見えるようにかけているのだろうか。しかも、日付けはその日のものではない。3日になっており、
赤い字でAと3を付け加えてある。つまり日めくりカレンダーは「A33」となっている。
 これにはさすがの魯平も頭をひねったのであった。
 次の日にはこの「A33」なる日めくりカレンダーは姿を消していた。そのかわり、なんと長方形の大水槽が3階のベランダにすえつけられ、中には水中植物が植えられ、色鮮やかな熱帯魚が泳いでいるではないか。これらの熱帯魚は、百貨店でつがい千元で売られていたのを知っている。
この事件が起きた頃の1千元というと、小さな家一軒購入するか、妻を一人娶れるくらいだった。43号住宅は金持ちが住んでいるらしく、室内はまるで小さな宮殿のようだった。それにしても1千元が何匹も泳いでいるとは。
 次の日には、あの大きな水槽は撤去され、小ぶりな水槽がしつらえ、多くの小さい熱帯魚が入れられている。望遠鏡で観察していた魯平は、さまざまな種類の熱帯魚にびっくりした。
 
 さてここで読者のみなさまに、さすがの魯平も失敗した事件をお知らせしなくては。
 
 数年前さるアパートに住んでいた魯平は、向かいの部屋のベランダに小さな金魚蜂を発見した。この金魚蜂を窓の外に高だがと掲げている。問題はその金魚の数である。あるときは数匹あるときは数十匹。数が増えたり減ったりするのだ。数が増えたり減ったりするばかりか、金魚の色がある日は赤い金魚、ある日は黒、ある日は白と変わるのだった。
 これには魯平は大いに好奇心をかきたてられた。外の誰かに金魚の数と色で何かを知らせていると考えた。








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オールド上海で活躍した推理小説家 赵苕狂 [作品紹介]

 おもしろい探偵を創作した作家を紹介しましょう。赵苕狂(1891~?)です。文壇では編集者として知られた彼が創作したのが、「失敗探偵」胡閑である。別に胡閑が探偵として無能なのではい。「失敗」するにはさまざまな理由がある。でも失敗する。失敗して申し訳なさそうにして小さくなっている胡閑をも当時の推理小説ファンは愛したのだった。
 私の読んだのは、珍しく成功する胡閑が出てくる作品『少女の悪魔』。魯平が終了したら紹介します。なかなか愛すべき可愛い探偵さんですよ。
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東方のルパン 謎に困惑 [作品紹介]

 二人の人間が煙のごとく消えうせて「魔の住宅」と呼ばれるようになった、新興住宅区画ー萍村ーの33号住宅。魯平はこの謎には何の食指も動かされなかったが、この頃、医者から休養を命ぜられていた魯平は、暇つぶしともしかしたら商売の種が見つかるかもしれないという動機で、33号室を借りることになった。
 画家俞石屏という触れ込みで33号住宅に引っ越した。
 この住宅区画は相当の広さをほこっており、住宅は全部で40戸。3階建ての豪華なものだった。33号室の1階から3階まで見回っていた魯平は、3階のあずまやの床に、トランプが落ちていることに気づいた。赤いハートマーク3が二枚落ちている。このトランプを見て魯平はがぜん好奇心をかきたてられたのだった。
 さっそく管理人に高級シガレットをすすめて、二人の失踪のいきさつを詳しくたずねた。
 次の日、33号住宅の裏口にあやしい二人連れが中を様子を伺っているのを発見した。この二人は33号、両隣の32号34号も中を伺っている。ついに34号住宅のベルを鳴らし、「王さんのお宅ですか。電報です。」と言った。なかからは女性の声で「違いますよ」。
二人はそれを聞くと住宅区の出口に歩いていったのだった。
 魯平は二人の後を追跡したが、車を待たせてあったらしく姿を見失った。
 家に帰った彼はトランプと怪しい二人の男のことを記録した。
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東方のルパン登場 謎だらけの住宅 [作品紹介]

 二人の人間が煙のように消えうせたというニュースは、魯平の耳にも届いたいた。魯平は常日頃から「探検家」だと自認していた。不思議な事件の専門家。その理由には二つあった。
一つは暇つぶし。もう一つは、世の中に起こる奇怪な不思議な事件は、彼のご飯の種であったから。ただ、彼は探検をするときに、気をつけていることがあった。表面的にいかにも不思議で奇妙であっても、一皮剥けばなんと言うこともない平凡な事件だったりする。その反対にちょっとした奇妙なことが、実は重大な事件に発展する場合もある。彼はこの二つの事例を数多く経験していた。それを見分けることを自分に課していた。
 したがって、今回のいかにもおどろおどろしい事件について、彼は99パーセント失踪した二人は自ら姿を消したと考えていた。したがって、この住宅を借りて事件を解明しようとは最初はまったく考えていなかった。
 ところがそんな時、偶然が重なり萍村の33号住宅を借り大仕事をすることになったのだった。
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東方のルパン登場 謎だらけの住宅 [作品紹介]

 『33号住宅』孫了紅著

 魯平は住宅を借りることにした。それは問題が発生した住宅だった。
 萍村と名づけられた住宅区画で、40個ある三階建ての住宅の内、33号と38号が空き住宅だった。ある日立派な紳士が自家用車で住宅地に乗りつけ、住宅を見せてほしいという。管理人は33号住宅に案内した。紳士は家の中を1階から見て歩いた。管理人はタバコを一服しようと、1階に下りて一服していると、紳士の叫び声がした。あわてて紳士がいた2階に行くと、紳士は姿を消していたのである。運転手にたずねても、紳士の姿を見ていなかった。
 それからしばらくして、今度は母親と娘がこの住宅を見に来た。この娘は京劇の娘役の女優で、少しは人々に知られていた。ところがこの娘が忽然とこの住宅から消えてしまった。
 さすがに人二人も煙のように消えうせたため、新聞沙汰になり、住宅地には野次馬までくるようになったのである。

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東方のルパン登場 謎だらけの住宅 [作品紹介]

 33号住宅    孫了紅著

  オールド上海で活躍した推理小説作家孫了紅。彼の小説には魯平という怪盗紳士が主人公を務めるものが多い。
 孫了紅は「東方のルパン」として魯平を位置づけた。作家孫了紅とその創作した怪盗紳士魯平については、すでに紹介してあるので読んでみてください。 
 今回作品を入手し読みましたが、面白いです。痛快です。
 『33号住宅』の抄訳をご紹介します。 

  
 1、問題の住宅

  われらが神秘的な友人魯平と、辞書にある「家」なるものとは、今まで密接なる関係を形成したことはなかった。ところがこのたびは、彼自ら住宅を借り受けることになったのである。住宅を借りることはごくごくありふれたことのはずであるが、住宅を借りたことがきっかけになって引き起こされた結果は、私たちにとっては想像を超えたことであっただけでなく、魯平にとってもまた想像を超えることだった。
 魯平が借り受けた住宅は、貝当路のはずれ、喧騒の都会の中でも人々に詩情あふれる一画と言われる場所に作ら、住宅地は「萍村」と名づけられた。
 魯平がこの住宅を借りたのは、都会の喧騒を離れた静かな環境に惹かれたからでもないし、家庭なるものを形成しようとしたわけでもない。彼の「好奇心」から借りうけたのである。言い方を変えると、彼の「商売の勘」が働いたからといってもいい。


 
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