SSブログ

東方のルパン 大活躍 [作品紹介]

 34号住宅ではこの日大騒ぎが持ち上がっていた。娘といっしょに失踪したはずの画家が突然主人を訪ねてきたからだった。梅望止は期待をこめて、魯平を客室の案内した。
 魯平は、「お宅のお嬢様は、私がお預かりしております。つきましては、10数年前に頂くはずだった真珠2粒と交換ということにしましょう。」といきなりきりだした。
 ここで梅氏は画家をよそおった魯平の正体にはじめて気づいた。
 魯平を相手に姑息な手段はつかえないと観念した梅氏は、真珠を魯平に渡した。すると、自動車が住宅地区に入ってきた34号住宅の前にとまると、中から姍姍と小翠が降りてきた。
 魯平は真珠と引き換えに、二人をすぐに家に戻したのだった。
 
 梅氏が二人にいきさつを尋ねても二人とも頑として何も語らない。清潔なホテルで二人いっしょに快適に過ごしたとだけしかついに聞き出すことができなかった。

 一方43号住宅の米商人の下には、電話がかかってきた。
 なんと電話には彼の息子が泣きながら出てきた。
 「お父さん!助けてよ。」間違えなく息子の声である。
 「なんで帰ってこない。」
 「帰れないんだよ。」
 「どこにいるんだ。」

 「そんなこといえないよ。」
 「どうやって助ければいいんだ。」
 「お父さん、僕おなかがすいて死にそうだ。ご飯が食べたいよ。」
 「ご飯だって。電話でご飯を送るわけにはいかないじゃないか。ご飯を食べさせてくれないのか?」
 「そうじゃないんだよ、お父さん。彼らも僕にご飯をたべさせたいのだけれど、お米が高くて買えないんだ。彼らが言うことには、悪徳米商人が売り惜しみをして米の値段を吊り上げていて、飢え死に寸前の人がいっぱいいるそうだ。ぼくもみんなといっしょに飢え死にするんだ。」ここまでいうと、息子はなくばかりだった。
 「くそったれ!」肥満体の米商人は心痛のあまりおもわずののしってしまった。
 
 
 
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。